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私を旅館に連れてって。その5 スズメが鳴いてる。 もう朝か。 欠伸をしながら身体を起こすと、浴衣がどこかにいっていた。 素っ裸だ。 昨日はたしか水戸がビール持ってきて、1本呑んだだけで桜木と流川が寝ちまって、 …それから俺…どうしたっけ。 いつも呑みすぎると最初の方から記憶抜けちまうんだけど、 …そんなに呑んだんだっけ? 俺はいつ脱いだんだ? 隣で寝ているであろう水戸に訊こうと思って、俺は頭を右に向けた。 まだ全部開いていなかった目を完全に開く。 …水戸も裸じゃねーか。 ヤったのか? ウソだろ。 マジかよ。 俺、ちっとも覚えてないんですけど。 「……勿体ねぇ……。」 俺は肩を落として呟いた。 と同時に、寝ていると思っていた水戸が吹き出した。 「…第一声がそれかよ?ほんっとおもしれー、アンタ。」 口許を抑えて笑いを堪えながら水戸は俺を見上げる。 寝てたんじゃなかったのかよ。 寝たフリして聞いてんじゃねーよ…。 さすがに恥ずかしいので話を変えることにする。 「んな、笑うことねーだろ…。…で、ヤったのかよ?」 腰は特に痛くなかった。 ってことは入れてはいないだろう。 寝転んだままの水戸が思った通り首を横に振った。 「入れてはいねーよ。 1回ずつ抜いただけ。」 そう言ってから、水戸は伸びをした。 まだ眠そうだ。 元々俺たちは後ろの方はあんまり使わなかった。 水戸はともかく俺はバスケで発散してるし、ベタベタしてれば満足だから、 躍起になってやることはない。 それに、次の日に響いたら大変だもんな。 「な、俺、勃った?酔ってたんだよな?」 身を乗り出して更に訊ねると水戸は眉を上げ、からかうような口調で言った。 「なかなか勃たないからサービスさせていただきましたよ?」 「うっそ、マジ!?やっぱ勿体ねぇッ…!」 ハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けて俺は呻いた。 水戸にサービスされるなんてこと滅多にないのに、何という勿体ないことをしちまったんだ。 「そんなに言うなら今日も泊まってけば?」 また笑いながら水戸が誘う。 俺にとって、とても魅力的なお誘いだ。 けど、それはマズイ。 「あいつらになんて言うんだよ。ムリだろ。」 「あー…そっか。…でも泊まりたくなるかもよ?」 歯切れの悪い言葉。 何が言いたいのかちっともわからない。 「何だそりゃ…。」 身体を戻して溜め息をつくと、視界に見慣れたものが映った。 「…。」 俺はそれを凝視した。 水戸が居心地悪そうに指で俺の腕を叩く。 「…何見てんの。」 「朝立ち。」 「…。」 勿論俺もしっかりその状態になっていた。 ちょうどいいじゃねぇか。 「ヌくか!?」 言いながら掛け布団を持って水戸の隣に寝転んだ。 「まだ時間あるよな?」 俺は水戸が持ってきたと思われる目覚まし時計を見て言った。 朝食の時間までまだしばらくある。 1発抜けるぐらいの時間はある。 仰向けていた水戸が頭だけ動かして、意地悪そうな笑顔で俺を見た。 「サービスはしねぇぜ?」 「…期待してねーよ。」 水戸のものに手を伸ばすと、水戸も俺に触れてきた。 昨日本当に抜いたのかよ。 っていうほど感じるんですけど、いや、マジで、ちょっと待って。 思いもむなしく、俺はあっという間にいってしまった。 珍しいことに水戸も結構早くて、俺と変わらない時にいった。 肩で息をしながら水戸に額をくっつける。 「水戸、…すげぇ、スキ。」 こんな時でないと恥ずかしくて言えない言葉を零した。 俺と同じ荒い息の水戸が吐息だけで笑う。 「…俺も、好きだよ。好きじゃなきゃ…アンタなんかと、付き合ってらんねー…。」 …なんかかよ。 「てめー、こんな時に、それはねーだろ。」 自嘲気味な水戸に額を押し付けると、いてーよと言いつつ押し返される。 しばらくじゃれあってから、とりあえずその辺に放ってあったティッシュを捨てて、 服着て窓開けて、朝食を食べに行くことにした。 換気と用意が終わった頃、誰かが部屋に訪ねてきた。 「朝食をお持ちしました。」 ここの仲居さんだ。 俺は首を傾げた。 朝食も、皆で食べる予定じゃなかったか? 俺が時間間違えて、もう皆食べ終わっちまったのか? 「せっかく持ってきてくれたんだから食べよう。」 普通に受け入れている水戸を見て、俺は眉間に皺を寄せた。 なんか、ヤな予感がしてきた。 けどまぁ、ハラ減ったし。 「いただきます。」 俺は食べてから考えることにした。 気がつくと、何だかんだでチェックアウトの時間になっていた。 昨日帰る用意をしていなかったから、慌ててしていたのだ。 …水戸は見てるだけで手伝ってくれないし。 俺は隣を歩いている水戸をじろりと睨んだ。 さっきから少し様子が変だ。 何か、緊張しているような感じがする。 ロビーに近付くにつれ、緊張が高まっていっているような。 俺が睨んでいるのにも気付かない。 廊下を曲がるとロビーに出た。 もう皆集まっているようだ。 背中しか見えないけど、皆いる。 やっぱ真っ赤な頭は目立つなー、とか思っていると視線に気付いて桜木が振り向いた。 気付くの早ぇ…。 やっぱ好きな相手に見られるとすぐ気付くモンか。 確かに俺も、水戸の気配には敏感だよな。 「ミッチー、洋平!」 桜木が手を振るのと同時に、桜木と流川を除く全員がすごい形相で俺たちを見た。 「な、なんだ?」 「…?」 その二人と俺はわけがわからないという顔をして辺りを見回した。 水戸はそれどころじゃない感じだ。 誰も俺と目を合わせようとしなかった。 何が起こってるんだか、俺には全くわからない。 「何なんだよ?」 教えてくれそうな宮城に訊くと、信じられねぇ、って目で見られる。 「…覚えてないんすか…?」 覚えてない。 っていうのは、あの話かよ。 俺が酔って、酔って…。 …こんなに引かれるようなことをしたのか。 そんなにひでーことをしたのか。 冷や汗をかきながら、恐る恐る何をしたのか訊ねようと口を開いた。 でも誰に。 あの反応じゃ宮城が答えてくれるとは思えない。 木暮も、赤木も、多分言わない。 皆不自然なほど俺を見ないようにしていた。 目を泳がせる。 「…花道。」 俺じゃなくて水戸が呼んだ。 やっぱり緊張しているようで、真面目な顔で深呼吸をしている。 桜木が不思議そうに首を捻った。 「どーした、洋平。」 出端を挫かれてしまった俺は口を噤むしかなかった。 実の所、邪魔してくれてよかったと思っていた。 この引きようは普通じゃねぇ。 気にはなるけど、聞かない方が幸せなことっていうのもあるんじゃねぇか? そうだ、聞かない方がいいんだ、きっと。 納得しようとした時、水戸が桜木に近付きがばっと頭を下げて一気に捲し立てた。 「俺ミッチーと付き合ってんだ、黙っててごめん!」 水戸の爆弾発言に、俺と桜木と流川が驚いて目を倍ぐらい見開いた。 「なっ、」 何を言い出すんだこいつは!? 「こっ、」 こんなとこで皆の前で!! 「バッ…、!!」 バカじゃねぇの、っていうかバカだろ!? 俺は言葉に出来ずうろたえまくった。 約束していた。 水戸が桜木が自分の気持ちに気付く前にバラしたいって言うから、俺は、 『せめて卒業するまで待ってくんね?バレたら平気な顔して部活に励めねぇよ。』 と言って、水戸は渋々それに同意して。 『じゃあ卒業したら言う。』 そういう約束だった。 ちゃんと覚えている。 三人共色々忙しくしてて今まで言えなかったが、近いうちにきちんと話すつもりでいた。 って、俺が話すんじゃないけど。 恋人だしその場にいてもいいだろ。 そういうわけで、桜木にバラすことに異論はなかった。 …でも、なんでよりによってこんな皆にバラしちまうんだよ。 しかも何で皆、あぁ、やっぱり…って顔してんだよ…。 すげー嫌な予感が…さっき感じたのより更に嫌な予感がする…。 辺りの静けさに少しだけ冷静さを取り戻して、俺は様子を窺った。 どう見ても、驚いているのは桜木と流川だけだ。 「…!!?」 二人とも開いた口が塞がらない状態で水戸を見ている。 水戸はずっと下を向いたままだ。 顔が見えなくて何を考えてるのかわからない。 誰も喋らなかった。 普通もっと驚くもんじゃねぇか? ええー、とか、うわー、とか…何で誰も言わないんだ。 落ち着きなく視線を彷徨わせていると、桑田と目が合った。 失礼なことに桑田はびくっと身体を震わせた。 考え込んでいる桜木の横を通って、俺は桑田の所へ行った。 こいつはきっと言う。 俺が昨日何をしたか。 嫌でも言わせてやる。 逃げようとする桑田の低い肩をしっかり掴む。 俺は真正面から桑田を見て、ドスの利いた声を出した。 「なぁ、俺、昨日、何したんだ?」 助けを求めて桑田が回りを見たが、誰も割って入れるわけがなかった。 「…き…」 「き?」 涙声の桑田が、観念してやっと教えてくれた。 「キ…キス…水戸君と、…深い方…、して、ました…。」 ああ、そっか。 バラしたのは俺か。 気の抜けた俺はずるずるとその場にくずおれた。 後ろで桜木が何か言っていたけど、聞く元気もない。 最悪な気分だった。 どんな顔して帰ればいいんだ、こいつらと一緒に。 長い溜め息をつくと、前に立っている桑田が何か呟いた。 「…三井さんがエロい理由って、やっぱり水戸君だったんだ…。」 本当にお前の言った通りになったぜ、水戸。 俺、今日も、泊まりたくなった…。 もう、マジで酒は呑まねぇ…。
終わりです。最後まで下ネタでスミマセン…。
しかもこれからのミッチーのことを書こうと思ってたのにすっかり忘れて終わってしまいました。だめすぎる…。 とりあえずこれからミッチーは洋平と一緒に暮らします、ということで!(逃) →戻る |