ひるがお


波の音と人の声で目を覚ます。
隣で恋人が眠っている。
俺はそれを見て微笑んで、時計を見ようと首を起こした。

…ない。
この人がどこかに放ってしまったのだろう。
俺は三井さんを起こさないようにそろそろと起き上がって辺りを見回した。
思った通り、時計はベッドの下に落ちていた。
壊れてないといいけど。
この時計は2台目だった。
すでにひとつこの人に壊されたのだ。

ベッドから降りて時計を手に取った俺はそれが指している数字を見て顔を青くした。
秒針はちゃんと動いている。
壊れてはいないようだった。

が、しかし。

「三井さん、起きて!ほら早く起きろって、今日昼から練習あるんだろ!?もう1時だぜ!」

あの、人の声は、海水浴しにきた人たちの声だったのだ。
朝っぱらからうるせぇな、と思ったけど、朝じゃなかった。
それどころか、もう昼もすぎていた。

焦って眠気も飛ばしてしまった俺とは反対に
「うー…。」
三井さんは唸って丸まろうとする。
長い腕が隣にあるはずの温もりを探していた。
「三井さんってば!」
むき出しになった肩を掴んで揺さぶる。
「うるせぇなぁ…。」
ようやく目を覚ました三井さんが寝起きの不機嫌な顔で起き上がって俺を睨む。
「時間!」
俺は三井さんの目の前に、機能しなかった目覚まし時計を差し出した。

たっぷり10秒ほど凝視したあと、
「……………げぇっ!!?」
そう叫んで三井さんは時計にかじり付いた。
「な、なんだよ、この時間!?」
「アンタが目覚まし投げるからだろ!さっさと用意しろよ!間に合わねーぞ!」
座ったまま呆然としている三井さんに彼の服を投げつける。
俺は三井さんの荷物をまとめてキッチンを漁りながら言った。
「服着てカオ洗って、メシは…パンあるから電車で食え、…ぼーっとしてねーで早く!」
「お、おう。」
我ながら母親みたいな言動だ、と俺は溜め息をついた。
ばしゃばしゃと水音が聞こえてくる。
そういえば俺もまだ顔洗ってない。

冷蔵庫から麦茶を出してコップに注いだ。
それをテーブルの上に置いて洗面所に向かう。
険しい顔をした三井さんとすれ違う時俺はテーブルを指して言った。
「お茶飲んで。足りねーのはどっかで買え。メシも足りないなら買って。荷物そこ置いてあるから飲んだらすぐ行けよ。」
「…わかった。行ってくる。」
「いってらっしゃい。」

顔を洗って出てくると三井さんはもういなかった。
なんとか間に合うかな。
ベッドの上に放り出されていた時計を元の位置に置いて、俺は身体を伸ばした。





あまりにも三洋っぽいですがミッチーの世話を焼く洋平萌えってことで!
私の中の洋平は大体一人で海の近くのボロアパートに住んでます…。

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