似た者同士




昼休み珍しく一人で廊下を歩いていると、偶然会った晴子ちゃんが飴を二個くれた。
いちごとメロンらしい。
花道に知れたら恨まれそうだなぁと思いながら、ありがとうって微笑んで受け取った。

ちょうど口寂しかったところだし、両方自分で舐めちまうか。
とりあえずいちごの方の袋を破って口の中に入れ、もうひとつはポケットに仕舞った。
いちごの飴って甘いよな。
二つも食えねぇし、やっぱりメロンは花道にやろう。

口を動かしながら教室に戻るのも何なので、時間を潰すことにした。
窓の外を眺めつつのろのろ歩く。
今日も空はうざいぐらいよく晴れていた。
あーやだやだ、こんな空見てらんねーな。
どうも気分がすぐれなくて足下に視線を落とした。
ちょうど角から誰かが出てきてぶつかりそうになる。
「うおっ、」
その人は驚いて声をあげたが、俺は飴に阻まれて口を開けられなかった。
ただ、聞きたかった声だった気がして顔を上げた。
思った通りそこには三井さんがいた。
あぶねぇって睨みつけようとした三井さんの動きが、相手が俺だと気付いた瞬間ピタッと止まる。
「よー、みっひー。」
飴を転がしつつ呼んだら変な発音になってしまった。
「ミッフィー?」
余計変に聞いたミッチーが顔をしかめて言った。
あー、あのうさぎ。
バッテンの口をしたキャラクターを記憶から引っぱり出す。
ってそれ似合わなさすぎねぇ?
こんな目つきもガラも悪いうさぎ、絶対子供に恐がられるって。
やべぇ、今笑ったら飴出そう。
吹き出しそうになるのを必死にこらえていると、ミッチーが俺の顔を覗き込んできた。
「何食ってんだお前。」
俺が耐えていることに多分気づいてるだろうけど、ミッチーはつっこまなかった。
怒りもしないで普通の顔をしている。
「ん?あぁ、あめ。」
どうにか笑いを収め、口を開けてまだあんまりとけていない飴を見せる。
変に我慢してしまったから腹が痛くなった。
「まだあるか?俺にもくれねぇ?口寂しくてよ。」
訊かれて、ポケットの中のメロン味を思い浮かべる。
でも思い浮かべただけ。
「もうねーよ。」
首をすくめ言うと、ミッチーの顔が今度は不満そうに歪む。
本当はあるけど、ねぇんだからしょうがねぇだろ。
「欲しいならこれあげよっか?」
口を指差し微笑みかけた。
次は呆然とした顔。
その後真っ赤になって口をパクパクさせる。
こんなにころころ表情変えて表情筋疲れねぇのかな、っていつも不思議に思う。
この人も花道も。
俺はそんな風に出来ないから、ちょっと羨ましいと思ってるのかもしれない。
「お前なぁ、学校だぞここは…。」
しどろもどろの呟きは聞かなかったことにする。
だって誰もいないし、今触りたい。
どうせ今日もこの人が家にくる時間はないのだから。
「早くしないと無くなっちまうぜ?口寂しいんだろ?」
挑発するように見上げて笑うと、ミッチーはちょっとうめいて顔を近付けてきた。
目を閉じて思い切り眉間にシワを寄せた恋人の、柔らかい唇が触れる。
それだけでさっき見た空みたいにすうっと心が晴れていった。
しばらくまともに逢ってなかったせいで欲求不満だった、とかいうつもりか、俺。
それって、いつもこの人が言ってるのと同じじゃねーか。
…ミッチーと同レベルかよ。
思った瞬間、飴を取らずに口が離れていった。
「やっぱいらねぇ。…もう口寂しくなくなったから。」
ポケットに手をつっこんで目も合わさず、口の中だけで三井さんが言った。
三井さんの後ろの方から誰かの声が聞こえてくる。
「…じゃ、またな。」
固まっている俺を置いて、三井さんは行ってしまった。

俺は壁にもたれてずるずるへたりこんだ。
通り過ぎる誰かに顔を見られないよう、自分の腕に顔をうずめて隠す。
「……甘すぎる。」
ミッチーの唇、じゃなくていちごの飴が。
そう飴が。

もうミッチーと同レベルでいいや。
好きなもんは仕方ねーよな。
触りたいもんは仕方ねぇんだよ。

だからさ、ミッチー。
近いうちに泊まりにおいで。





何かでしばらく会ってなかった二人。国体前とかかな。
とりあえず外でいちゃいちゃするのはやめた方がいいと思います。(笑)

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